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須山 太助

Author:須山 太助
勤務地:三愛会総合病院 泌尿器科
:埼玉県三郷市彦成3-7-17
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僕が腹腔鏡手術(ラパロ)に手を出さなかった理由

「あなたは癌です」

と言われたらあなたは まず 何を考えますか?

「痛くない治療方法がいいなあ。」
「傷が目立たない治療方法がいいなぁ」

と考えますか?

いや、ほとんどの方はそんなことよりも
「自分には死ぬのだろうか?」
「自分に残された時間はどの位あるのだろうか?」
「治す方法はあるのだろうか?」
といったことを考えるのではないでしょうか。

そして、その後しばらくして、自分が癌であることを受け入れた後に
欲を出して「痛みの少ない治療がいい。傷が目立たない方がいい」などと考えるのです。

それでは
「あなたの状態では手術は不可能です。」
と言われたらあなたはどうでしょう?藁をもつかむ思いで何でもいいから治す方法がないかを探し民間療法を含む治療を受け入れるのではないでしょうか。

僕は、なるべく 
「治療(手術)は不可能です」
という言葉を言いたくない。

それが僕が腹腔鏡手術に手を出さなかった理由のひとつです。
新しいものに手を出すよりもまずは既存の方法をより高度な技術でできるようになりたい。
と僕は思ったからです。

つまり、たとえば最近多い前立腺癌(:2002年に天皇陛下が自身が前立腺癌であることを公表しその後手術を受けられた)の理想的な手術適応は「PSA<10ng/ml、Gleasonスコアが7以下、かつT1c-T2bまで」とされており(前立腺癌診療ガイドライン2006年版:日本泌尿器科学会/編 より)その基準を遵守している泌尿器科医が多いのが事実です。しかし、そこには但し書きがあり、「一方、Gleasonスコア8以上、あるいはPSA20ng/ml以上、さらにはT3症例にたいして、あるいは高齢者の局所前立腺癌を前立腺全摘除術の適応外とする理由は証明できない。(中略)もちろん、それらすべてが本治療の適応とならないことは明確であるが、期待余命、QOLなども考慮し対応することが肝要である。(中略)この手術における経験、慣れは治療成績、術後合併症、後遺症に関与している、ことを考慮すると、広範な局所切除と外科的バランスを取ることのできる経験のある泌尿器科医が行うべきであると考えられる。」と明記されています。

これは簡単に説明すると、進行性の前立腺癌であっても訓練を受けてきた、ないしは経験の豊富な泌尿器科医が手術をすることで寛治(または生命予後を伸ばす)させられることができるということなのです。
癌研有明病院、がんセンター中央病院など日本で癌治療の最高峰とされている施設では腹腔鏡手術が導入されていませんがどちらもその 広範切除 を行っています。
僕も、癌研有明病院などの一流の術者のもとで同手術法を学んできましたが、ただ前立腺を摘除するのと、手術成績(癌のコントロール)やQOLにこだわって 広範に 摘除するのとでは難易度も全く変わります。
また、僕は、前述のGleasonスコア・PSA値・Tstage・年齢に関しても、より手術適応を広く設定しています。

また、「痛み」ですが、前立腺全摘術の場合は開放手術では臍下を約10cm前後切りますが、ほとんどの患者さんは翌日から歩いています。麻酔技術の向上により痛みをコントロールすることができますし、そもそもこの切り方は筋肉をあまり切らないので痛みが強くはありません。しかも前立腺癌にかかる方は男性のみです。そんなに傷痕にこだわりますか?

つづいて腎癌ですが、これは開放手術では10cm以上の切開が必要ですが、腹腔鏡手術では数cmの傷がいくつか付くだけ。確かに違いはあります。ただ、腎癌でもより大きく悪い部分を取り除くには開放手術のほうが適しています。ただし、早期の腎癌で若い女性(特に未婚)であれば僕も腹腔鏡手術をお勧めするかも知れません。それは、そのような患者さんにとっては腹腔鏡手術のほうがベターであると思うからです。


以上、長くなりましたが、結論としては癌は死につながり得る病気です。
だからこそ、一時の痛みや傷の大きさよりも自分の命のことを考えていただきたいし、僕も追求していきたいのです。
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